百田尚樹「カエルの楽園」 登場人物とあらすじ&感想(ネタバレなし)

百田尚樹 カエルの楽園


 

百田尚樹氏の「カエルの楽園」を読みました。

私は元来本好きなのですが、ここ最近は本を読む習慣からすっかり遠ざかっていた中での読書でした。

そんな私に読書の機会を与えてくれたのは、実は櫻井よしこ氏のある雑誌でのコラム。

こちらでは、「カエルの楽園」を読むきっかけとなった櫻井よしこ氏のコラムのことや、この本の感想、また登場人物についてまとめてみたいと思います。

 

百田尚樹「カエルの楽園」について

櫻井よしこさんのコラム

櫻井よしこ氏は、週刊ダイヤモンドの最後に近いページに「オピニオン~縦横無尽」というタイトルで、コラムを毎週連載されています。

櫻井氏は2016年5月14日号で、百田尚樹著「カエルの楽園」を絶賛されてました。※以下の引用は全て「週刊ダイヤモンド2016年5月14日号」より

コラムの冒頭は

百田尚樹氏の『カエルの楽園』(新潮社)が面白い。

から始まり、

これは現代日本の実相を物語にしたものだ。米国人作成の憲法に書き込まれている非現実的な国防論、日本に迫る中国の脅威、同盟国の米国の思いなど、現在進行中の国際問題がカエルたちの行動や言葉を通して分かりやすく伝わってくる。

と説明されています。

 

またこのコラムでは、「月刊Hanada」(飛鳥新社)6月号で同書が取り上げられていることを説明した上で、

評論家の石平氏が「読んだ時、人の目を憚らず涙を流した」と告白していた。

と石平氏のその時の心情を交えて「カエルの楽園」を解説。

 

またコラムの一番最後は

多くの人に本書を読んで現実を見る力を養ってほしい。

という言葉で結ばれています。

 

私は国際情勢には興味はあるものの、全く詳しくありません。

ですが、櫻井よしこ氏の一貫性ある主張には、以前から感銘を受けていたところがありました。

だから本屋でこの本に目が止まったのは、櫻井氏のコラムを思い出したからで、購入当日のうちに読んでしまったのは櫻井氏の影響が大きかったのかもしれません。

※櫻井よしこ氏の週刊ダイヤモンドのコラムは、オフィシャルサイトのコラム欄から閲覧可能です。念のため下記にURLを貼っておきます。

櫻井よしこオフィシャルサイト/コラム欄
櫻井よしこオフィシャルサイト/トップページ

週刊ダイヤモンド2016年5月14日号櫻井よしこ氏コラム



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「カエルの楽園」を読んだ感想など

最近読書から遠ざかっていた私でも、この「カエルの楽園」は童話風に書かれていたこともあり、読みやすく、それでいて生々しいので、気がついたら一気読みしてました。

文句なく、買って良かったです。

 

物語の最後にはお決まりの、

「この物語はフィクションであり、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。」

という一文が当然のように書かれています。

 

でも国際情勢に疎い私ですら、この○○はあの国だな~とピンときてしまうくらいですから、詳しい方は、この物語にぐいぐい引き込まれるのではないでしょうか。

この物語はファンタジーっぽいので、国際情勢を知らない子どもでさえも読み進められ、またそれはとても意義のある読書体験になるのではないかと思います。

それは、この物語に登場するカエルたちが、現実の人間関係の理不尽さをストレートに表現しているからです。

それはあたかも子どもの頃に、怖いもの見たさで読んでしまったグリム童話の世界にいるような感覚に似てました。

 

この物語の世界を百田氏が「カエル」にした理由は、あの有名な「茹でガエルの法則」から来ているのかなと思ったのは私だけでは無いと思います。

ですが表紙絵は、ドレのラ・フォンテーヌ寓話より「王様を求める蛙」。

関連があるのかどうか、少し検索してみると百田氏の刊行記念インタビューが新潮社のページに掲載されているのを見つけました。

その中では百田氏が物語の主人公をなぜカエルにしたのか、その理由も語られてますので、興味ある方は下記サイトからご確認ください。表紙絵の寓話も関わっているようです。

百田尚樹『カエルの楽園』刊行記念インタビュー
※新潮社ホームページより

 

また、この本には「まえがき」も「あとがき」もありません。

だから冒頭で引用しました、週刊ダイヤモンドの櫻井よしこ氏コラムは、この作品の理解を深めるのに役立ってくれると思います。

 

印象に残ったシーン

ネタバレで無い範囲では、ナパージュ国で「三戒」を病的に守ろうとするあるカエルが、壇上ならず、ハスの上で声を上げて自らの主張を熱弁したシーン。

その言葉に違和感を感じる、主人公ソクラテスの思いが一番印象に残りました。

「わたしは他のカエルを殺すくらいなら、殺される方を選びます。三戒を守って、黙って死んでいきます」

沼のカエルたちの多くが拍手しました。

ソクラテスは「殺すよりも殺される方を選ぶ」という言葉を聞いた時、言いようのない違和感を覚えました。というのも、ナパージュに来るまで多くの仲間たちが殺されるのを見てきたからです。

~中略~

もしかしたら今ハスの葉の上で喋っている若いカエルは、実際にウシガエルやダルマガエルに仲間を食べられるところを見たことがないのかもしれないと思いました。

※百田尚樹「カエルの楽園」199ページより引用

考えてみれば、私も時にいっぱしのことを言ってしまって「しまった!」と思うことがよくあります。

自身で経験していないことは、つい想像でふくらませてしまいがちなので、できればいつも謙虚で公平に物事を判断したいものです。

知ったかぶりは端から見てる人にはお見通しなので、ほんと怖い。。

 

その他、カエルのユニークな挿絵が20カットほど小さく入っているのですが、これは百田尚樹さんの挿画とのこと。

百田尚樹「カエルの楽園」挿絵
※百田尚樹「カエルの楽園」123ページより引用



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あらすじ

この物語の簡単なあらすじを、Amazon「カエルの楽園」のページから引用してみます。

安住の地を求めて旅に出たアマガエルのソクラテスとロベルトは、平和で豊かな国「ナパージュ」にたどり着く。そこでは心優しいツチガエルたちが、奇妙な戒律を守り穏やかに暮らしていた。ある事件が起こるまでは―。平和とは何か。愚かなのは誰か。大衆社会の本質を衝いた、寓話的 「警世の書」。

上記の補足ですが、主人公のソクラテスの祖国はある時、凶悪なダルマガエルの群れに襲われ、多くの仲間が食われてしまうという悲劇に見舞われます。

そこから命からがら逃げたカエルも、背後に潜んでいるマムシやその他天敵に結局食われてしまうという、為す術のない毎日。

そんな現実に耐えられず、安住の地を求めてソクラテス率いる総勢60匹が祖国を離れます。

結局、ツチガエルの国「ナパージュ」にたどり着くまでに生き残ったのはソクラテスとロベルトの2匹だけ。

 

そのナパージュは信じられないほど平和だったのですが、そこに住むカエルたちと話をする度、ソクラテスとロベルトはその国の平和さに違和感を覚えます。

キーワードはその国で守られている「三戒」という戒律。

その「三戒」の教えに背けば死刑が宣告され、物語ではその犠牲になるカエルも。。

 

なんとソクラテスの相棒のロベルトは、その「三戒」の教えに洗脳され、ソクラテスと途中仲違いしてしまいます。

こちらではネタバレは書きませんが、予想通りとはいえ結末は結構ショッキングな展開になっています。

メスのツチガエル「ローラ」にも注目です。

 

登場人物

ほどほどにたくさんのカエルが登場しますので、私の方で登場するカエル(名無しは除く)をまとめてみました。

■主人公の国(アマガエル)
・ソクラテス(主人公のアマガエル)
・ロベルト(ソクラテスの相棒)
・クンクタトル(長老のアマガエル)
・アシュケナージ(ソクラテスと祖国を出る。途中ヒキガエルの国に留まる)
・ヨハン(ソクラテスと祖国を出る。途中ヤマアカガエルに食べられる)

■ヒキガエルの国
・クセルクセス(ヒキガエルの王様、アマガエルを一日5匹食べる)

■ナパージュ王国(主にツチガエルの国)
・ローラ(メスの若いツチガエル。最初にソクラテスらに声をかける)
・ハインツ(背の高い若いツチガエル、ソクラテスの旅の話に興味)
・マイク(お祭り広場を取り仕切っている派手な色のツチガエル)
・ピエール(祖先がエンエン国。ヌマガエルだが一族はずっと以前よりナパージュに住んでいる)
・デイブレイク(国一番の物知りで国を動かす実権も合わせ持つ。「三戒」擁護派)

・ハンドレット(老ツチガエル。デイブレイクの思想に反対。嫌われ者)
・ハンニバル(ナパージュで悪名高い3兄弟の長男。ウシガエルと対等に戦える)
・ワグルラとゴヤスレイ(ハンニバルを兄に持つ兄弟。ウシガエルと対等に戦える )
・フラワーズ(しっぽが残っている幼カエル。デイブレイクに洗脳されている)
・ブランタン(国で一番人気のある語り屋。面白い話を聞かせるカエル)

・シャープパイプ(語り屋のカエル)
・スチームボート(巨大な老ワシ。ナパージュ国の真の支配者)
・プロメテウス(7匹の元老中一番若い壮年の元老。「三戒」破棄派)
・ガルディアン(一番長老の元老。「三戒」擁護派)

■アマガエルの天敵
・イワナ、マムシ、カラス、モズ、サギ、ハト、ネズミ、イタチ
・ダルマガエル、トノサマガエル、アカガエル、ヒキガエル、ヤマアカガエル、ウシガエル

 

まとめ

「カエルの楽園」はとても読みやすい物語(寓話)ですが、日本の抱えている国際問題と、人間の普遍的な性が相まって、とても奥が深い物語だと思いました。

この本は、読み手の立場や想像力によって、かなり印象が左右される本だと思います。

ぜひあなたならではの一冊にしてみてください。