イスラム国の現在がわかる!池上彰「知らないと恥をかく世界の大問題7」感想

池上彰 知らないと恥をかく世界の大問題7


 

情報を活かす力』に引き続き、『知らないと恥をかく世界の大問題 (7) Gゼロ時代の新しい帝国主義』(池上彰著・角川新書)を読みました。

『情報を活かす力』は「ライフハッカー[池上版]」のような感じでしたが、『知らないと恥をかく世界の大問題(7)』は、最新の国際ニュースがパッケージ化されているようで、とてもお得感がありました。

2冊を読んでみて感じるのですが、著者の本は穴がないというかすきがないというか、読後の満足感はそこにもあるのかなと思います。

 

最近の世界情勢は、恥ずかしながらあまり把握できていませんでしたが、この本を読むと、今起こっている国際問題の全体像がわかります。

一つ一つの問題がなぜ起こったのか、歴史的な背景から解説されていますので、本書は知的好奇心を満たす一冊になること間違いありません。

 

最近気になるのは、やはりテロが多くなっていると感じること。

本書の帯にも、「時計の針が逆戻り ”世界戦争”の危機がせまる!?」とありますが、テロ以外にも中国をはじめ怪しい動きをしている国がいくつかあると思います。

2015年、ローマ法王・フランシスコは、パリの同時多発テロ、自称「イスラム国」の台頭、アメリカにおける人種間対立、依然として継続するロシアとウクライナの問題などを見て、

「すでに第3次世界大戦が始まっている」という旨の発言を行い、世界中のメディアを驚かせました。(276ページより)

こちらでは本書の概要や感想など、簡単にまとめてみたいと思います。



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本書の概要

本書のシリーズは、6年ほど前に第1弾が発売され、今回が第7弾目になります。

今回のテーマは「Gゼロ時代の新しい帝国主義

Gゼロ時代」とは、政治学者・イアン・ブレマー氏が提唱する、超大国が存在しない時代のこと。

Gは、G7(Group of Seven)やG8でおなじみのGになります。

帝国主義」の意味は、かつて帝国だった国々が、過去の栄光を取り戻す野望を抱いているからです。

本書では、中国、ロシア、イラン、トルコを取り上げています。

下記は本書の目次です。

プロローグ 新しい帝国主義時代の到来
第1章 大転換の中心「イスラム世界」の変化と世界への波及
第2章 ヨーロッパは受け止めきれるか?
第3章 内向きになるアメリカの苦悩と巻き返し
第4章 したたか中国の戦略と東アジア
第5章 せまりくる人類共通の大問題
第6章 安倍政権の「世界の大問題」への対処
エピローグ 近代文明の逆走を止められるか
おわりに
熊本地震を受けてのメッセージ

私は特に第1章と第2章が苦手だったので、とても勉強になりました。

具体的には、自称「イスラム国」(IS)とフランスやベルギーで起こったテロの関係や、ヨーロッパの難民問題を理解することができました。

インターネットの情報では、系統だった理解が難しいこともあり、この本はしばらく重宝しそうです。



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自称「イスラム国」=ISってなに?

わかりにくい自称「イスラム国」について学んだことを少しだけまとめてみたいと思います。

自称「イスラム国」のきっかけをたどると、2003年のアメリカのイラク攻撃に遡ります。

だから自称「イスラム国」を作ったのはアメリカということになります。

 

アメリカは2001年9月11日の同時多発テロで多くの犠牲者を出しました。

当時大統領のジョージ・ブッシュは「テロとの戦い」を宣言。

首謀者オサマ・ビンラディンはアフガニスタンのタリバン政権に匿われていたので、アフガンを攻撃、タリバン政権を崩壊させました。

 

次の標的は、イラクのサダム・フセイン政権。

フセイン政権は大量破壊兵器を隠し持っている。テロに渡ったら大変という理由で2003年アメリカはイラクを攻撃、フセイン政権も崩壊します。

しかし大量破壊兵器は存在せず、戦争の動機は石油欲しさの攻撃だったと言われています。

悪いことには、当時のブッシュ大統領はイラクのことを十分研究せずにイラク攻撃を行ったとのこと。

フセイン政権が倒れたらイラクは三つ巴(イスラム教のスンニ派とシーア派、クルド人)の内戦状態に陥ることは事前に大統領に伝えられていたそうです。

 

フセイン政権はバース党一党独裁だったため、警察官、医者、教職員、軍隊の将校、公務員全てがバース党員でした。

そのバース党員をブッシュがおかまいなしに全員クビにしたために、一夜にしてイラクの統治機能は崩壊してしまいます。

フセインはスンニ派ですから、バース党員も多くはスンニ派でした。兵隊たちは、クビだと言われ、頭にきて武器や弾薬を盗んで姿を消します。

このとき自称「イスラム国」の「種」が蒔かれました。ブッシュの罪は大きいのです。(58ページより)

 

また、フランスの同時多発テロの背景には、フランスの移民政策に不満を持ったイスラム教徒の存在があるようです。

これについては本書で詳しく書かれていますので、興味ある方は読んでみてください。



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まとめ

今の国際情勢の混乱は、第一次世界大戦までさかのぼらないと理解できないことが多いそうです。

例えば、ウクライナとロシアの問題、パレスチナとイスラエルの問題、中東の問題、アメリカの台頭などなど。

一例として、中東問題に関してはイギリス外交の3枚舌が原因です。

当時、敵国であるオスマン帝国の支配下にあったアラブ人に反乱を起こさせ、パレスチナにおけるアラブ人居住地の独立支持を約束(フサイン=マクマホン協定)。

そしてユダヤ人には、パレスチナにおけるユダヤ人の居住地を作ると約束(バルフォア宣言)して戦争資金を調達、

またフランスとは、戦争が終了したらオスマン帝国を山分けしようというサイクス・ピコ協定を結びます。

 

結局、イギリスとフランスが戦勝国になったのですが、アラブ人、ユダヤ人との約束は反故。

宗教・人種の関係なく、パレスチナはイギリス、シリアはフランスのものにしたそうです。

このように第一次世界大戦からのしこりがずっと続いている問題は少なくないようです。

 

著者いわく、世界を読み解く力を養うためには、宗教の基礎知識や自分の国のことも知らなければならないそうです。

そして歴史は暗記モノとは違い、因果関係の蓄積であると述べています。

因果関係を調べるのはおもしろい、だから歴史は面白いとのことでした。

そこで私からのアドバイスです。世の中の最新の動きをニュースで確認しながら、時には歴史の本を読み返して、長い時間軸の中でニュースの意味を考えてみてください。

たとえば、「それはどうして起きたのか。そして、どんな歴史的背景があるのか」。

自分の頭で因果関係をたどる作業を積み重ねる。そこから将来を考えるヒントが見えてくるかもしれません。(281ページより)

 









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