【ダウン症・自閉症】大人になった娘のことを2人の父が語る本

ダウン症:哲学をする父たちの語らい


 

哲学する〈父〉たちの語らい ダウン症・自閉症の〈娘〉との暮らし』(竹内章郎著、藤谷秀著・生活思想社)を読みました。

この本では、ダウン症の娘、自閉症の娘を育児しているそれぞれの父親が、日々の暮らしの中で生じた、娘に対する思いなどを対談形式でつづっています。

著者2人共、大学の教員をしており、それも哲学の研究をされているとのこと。

かといって難しく書かれた本ではなく、同じダウン症の子をもつ私にはとても読みやすい本でした。

 

特に私が欲しかった情報は、息子が成人になった時のイメージ。

この本では、ダウン症・自閉症、どちらの娘さんも成人していますので、その辺りが参考になると思って読みました。

対談形式の構成になっていますが、リアルタイムの対談ではなく、書簡のやりとりっぽい雰囲気です。

それゆえ、それぞれのパートがある程度まとまっているため、ダウン症と自閉症、それぞれ読み分けても問題無いと思います。

 

私はダウン症に関しての情報が欲しかったので、まずはダウン症の娘を育てている竹内章郎氏のパートを全て読みました。

また、上の子が自閉症スペクトラムなので、日を改めて藤谷秀氏のパートを読んでみたいと思います。



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息子との共通点

読み進めて驚いたのは、竹内氏の娘さんと私の息子は結構症状が似ていること。

障害が重度であること、32才にしてまだ言葉がスムーズに出ないこと、食事・トイレなどほぼ全介助されていることなどなど。

男女と年齢が違うだけで、ほぼ息子と同じ感じですが、ひょっとしたら息子の方が程度が少し重いかもしれません。

それは歩き始めたのが著者の子は3歳で、うちの子は7歳だったからです。

このため、外出での装具や車椅子は欠かせません。

 

また、著者の娘さんは以前転倒して頚椎を脱臼、大手術の上7ヶ月の入院を余儀なくされたとのこと。

うちの子は頚椎がずれていて、転倒したら死ぬ可能性があるとまで言われています。

だからこの件に関しても、将来手術の可能性がある息子と重なるものがありました。

 

その他、似ているところは下記になります。

・生まれた時は心臓に穴が開いていて、自然に塞がったこと

・自閉傾向があること(ハンカチを振り続ける、唸り声を上げるなど)→うちの子はリュックについているベルトや紐を、ずっと手でもて遊んで見つめていることが多い

・歯医者が苦手→うちの子も耳鼻科を含めて数人がかりで押さえつけて治療してもらってます。男の子なので大きくなると不安です。

 

共通の悩み事

親として、父として、悩む内容もやはり似ていました。

◆自責の念

誕生後の2~3年前まで、僕たちに愛の「受容」に欠けていたところがあって、愛とのコミュニケーション不足となったのではないか、そのことが彼女の自閉的傾向を生んでしまったのではないか、という「自責の念」なのです。(55ページより)

私も結構「自責の念」が多いです。

「あの時こうしていればよかったのではないか」、というのは障害児を育てている親が皆思っていることなのではないでしょうか。

うちの子も自閉傾向が強く、私の「自責の念」は、幼い時によく夫婦喧嘩していたこと。

でも自閉傾向は何に原因があったのかが証明できないので、根本的な問題と割り切るほうが健全だとも思います。

ただ今後が大事だとわかってはいるものの、夫婦仲だけは今だ手を焼いているところです。。

 

◆外出時

以前よりは慣れたと語ってますが、外出や外食で少し悩まれているようです。

私の子も出かけると、車いすに乗りながら変なポーズをしたり奇声をあげたり。。

また外食は周りを汚すし、騒いだら出て行くしか無いので、もとから外食には行かないようにしています。

ただどこかで練習をしなければいけないので、時々は病院のレストランやフードコートで食事してます。

以前寿司屋で柱に頭を打ち付けだした時は、さすがに店を出ざるを得ませんでしたが…。

 

その点、著者は私より我慢強いので見習う点は多いです。

私も著者と同じく、いちいち周りを気にすると子どもに集中できないので、あえて周りを見ないようにしています。

そのため、無意識に他の人にじゃまになっていたりすることも多々あり、これを理解してくれる人って多分いないよな、といつも悲観ばかり。。

反面、周りへの注意が散漫になることがあるので、特に事故には要注意ですね。



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勉強になったこと

◆ダウン症の告知について

著者の場合、ダウン症の告知は、生後すぐに著者には知らされたそうですが、妻に話したのは一ヶ月後で、著者から話したそうです。

父親にはすぐに告知しますが、母親には母体などを配慮して、1ヶ月後に伝えるということはよく聞くところ。

私の場合は夫婦同時に告知されたのですが、やはり家内の泣き方は尋常ではなかったです。

また私も立場は同じだったので、フォローの言葉もありませんでした。

 

実際にどちらが良いのか考えたとき、2人わからないままパニックになることよりも、まずお父さんがダウン症のことを勉強し、時間を開けてお母さんに伝えるというのも、場合によってはありなのかなと思いました。

もっともお父さんの肝がすわってないと、この作業は出来ないかもしれませんが。

 

◆障害者教育の問題点

ここで想定されている障がい者像は、単純化して言えば、障がい者教育が充実すれば一般就労と自立生活が可能となる、というものでしょう。

しかし、その障がい者像には大きな問題があるように思うのです。それは、この想定に当てはまる障がい者は、現実にはごくごく一部だけだ、ということになるのです。(83ページより)

著者の娘さんも、私の息子も、死ぬまで自立は難しいかもしれません。

「教育すればきっと~するはず」という理想論は、知的障害者に限ってはどこまで当てはまるのか一概には言えないところだと思います。

著者は、介護施設の充実に程遠い現状は、この点に問題があるのではないかと指摘しています。

 

◆障害者の親に怒鳴りこまれた

「あなたの娘(愛)のような、重い障がいの子を、何で特殊学級に入れたのだ。おかげで、あなたの娘に先生の手がかかって、私どもの子どものような障がいの軽い子どもの教育が疎かになっている」、

と夜遅く、同じ特殊学級に通う子どもをもつ親たち数人に家に怒鳴り込まれたのです。(84ページより)

障害児の親は様々なストレスを抱えており、そのためこのような結果になったのだろうと思います。

もしかして軽い方(うちの子と相対的に見て)がストレスにさらされやすいのかもしれません。

障害のある子の親が、常識外れな行動をし、周りの住民から敬遠されることは時々聞く話ですが、そうなると子どもが過ごしにくくなるんですよね。

当事者と周りとでは、知らず知らず温度差が出ることがあるので、その点いつも注意しています。

でも避けられないことは割り切るより仕方ないですよね。

 

◆NHKについて

NHKの障害児番組でのこと、1歳までは著者の娘さんも写されていたそうですが、発達が遅れた2歳くらいからは写してもらえなくなったとのこと。

そういえば家内が雑談の中で話していたのですが、NHKが支援学校に来た時に、写してもらえるのは比較的障害の程度が軽い学級だけで、重い子の方は写してもらえなかったとのことでした。

 

まとめ

育児経験30年以上の著者も、子に対する将来の不安が先立つといいます。

それは今の介護施設の数が足りておらず、必要なときにすぐに入れるとは限らないからです。

もし預けられる施設があったとしても、特殊すぎる我が子だけに、信頼して預けられる人は皆無だろうという悩みも。

著者は、障害者福祉の問題点に関して結構ページを割いており、この問題について勉強されたい人には著者の発言はとても参考になるはずです。

 

子どもが成人になっている人の話は、未経験ゆえ得るものが多いです。

なにより同じ境遇の子を育てている方がいらっしゃること、それだけでもかなり心の負担が減りました。

この本の存在意義は社会的に大きいと思います。