『言ってはいけない 残酷すぎる真実』内容と感想~劣性遺伝のタブー視について

橘玲 言ってはいけない 残酷すぎる真実 表紙


 

人は何を期待して本を読むのでしょうか。

私は月並みですが、物事を考える引き出しを数多く持ちたいので読書をしているような気がします。

今まで気づかなかった視点でものを考えることで、これからの生き方がより良く変わることを期待するからなのですが、

今回読んだ橘玲著『言ってはいけない 残酷すぎる真実』はこの欲求を十分満たしてくれるものでした。

こちらではこの本の概要や学べたこと、私の感想などについて書いてみたいと思います。

 

橘玲「言ってはいけない 残酷すぎる真実」について

本の概要や読むきっかけなど

新潮新書から1ヶ月ほど前に出版された橘玲(たちばなあきら)氏の『言ってはいけない 残酷すぎる真実』。

この本が今バカ売れしており、最近は雑誌などの書評に取り上げられていることが結構多いです。

私がこの本を買おうと思ったきっかけは、『週刊ダイヤモンド』の佐藤優(さとうまさる)氏の書評。

余談ですが佐藤優氏は、『週刊ダイヤモンド』で毎週書評コラムを担当されています。

毎回3冊の本がピックアップされるのですが、ジャンルの偏りがあまりないので毎回参考にしています。

5月21日号では今回紹介する本、『言ってはいけない』が掲載されてました。

橘玲著「言ってはいけない」は、人間の成長は遺伝と環境の双方の要因によってなされるということを、生物学的知見を援用しつつ興味深く物語っている。

~中略~

英才教育という神話に取りつかれている親にとっての必読書だ。

※引用:週刊ダイヤモンド 2016年 5/21 号 P90 佐藤優コラム「知を磨く読書」

 

今の常識では、どんな子供でも(例えば不遇な環境に生まれた子や一部の人種)教育さえしっかりと受けさせれば、知的に関しては皆平等に成長するという風潮があるように思います。

でもこのことには「遺伝」に関することがすっぽりと抜け落ちています。

巷ではタブー視されているこの問題を、『言ってはいけない』ではまともに取り上げています。

例えば、

①スポーツ選手の子どもは運動が得意だ
②音楽家の子どもは歌がうまい
③大学教授の子どもは頭がいい
※引用:橘玲著『言ってはいけない』新潮新書P19

 

この3つの文は世間ではごくごく当たり前のことと考えられているため違和感はありませんが、次に意味合いを逆にしたらどうなるのか、という問題提起に続きます。

例えば③を逆に考えると

子どもの成績が悪いのは親が馬鹿だからだ
※引用:橘玲著『言ってはいけない』新潮新書P20

 

才能を遺伝によるものと考えるなら、当然こちらの方も語られてしかるべきだという主張です。

学校教育の現場では、頑張っても勉強できない子どもがいるのが現実ですが、それを認めると教育が成り立たないので認めるわけにはいきません。

結果、不登校や学級崩壊が起こってしまうのは必然だと著者は語ります。

 

上記以降もとても興味あるテーマが立て続けに並ぶのですが、私はその中でも

『精神病・依存症は遺伝するのか』
『犯罪は遺伝するのか』
『あまりに残酷な「美貌格差」』
『子育てや教育は子どもの成長に関係ない』

などの章がとても興味深かったです。

著者の橘玲さんの公式サイトでは、この本は「R指定」とあります。

本書は、前作の『「読まなくてもいい本」の読書案内』からのスピンオフという性格も持っています。前作は「高校生でも楽しんで読める」というのがコンセプトでしたが、本書は「R指定」です。興味を持たれた方は、合わせてお読みいただければ幸いです。

※引用:橘玲公式サイト/『言ってはいけない 残酷すぎる真実』発売のお知らせ



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この本を読んだ感想

人間は基本的には平等という建前になってますが、実際は全く違っていることに誰もが気づいているはず。。

一番わかりやすいのは容姿の問題。

顔だちなどもそうですが、太っている痩せているなどの特徴も含まれますよね。

例えば、威圧感のある顔だちは就職の際に不利にはならないのでしょうか。

この本によると、容姿が良くない女性よりも実は男性の方がダメージがとても大きいことがデータでもわかっているそうです。

ショックだったのは、容姿を見ただけで直感的にその人の性格がある程度わかってしまうことや、顔だちが裁判に少なからず影響を与えるデータが出ていたこと。

いろいろと考えさせられる本でした。

 

また、『依存症や精神病は遺伝するのか』というテーマについても、私には障害がある子がいることからとても興味を持ちました。

遺伝のしやすさからいうと、身長が高い親から背の高い子どもが生まれる確率よりも、例えば躁うつ病の親から躁うつ病の子どもが生まれる確率は高いそうです。

その他、統合失調症も同じようになるのですが、このように精神病と遺伝については因果関係があるようです。

精神病は遺伝による可能性が高いということは親にとっては信じたくない話ですが、育て方のせいではないという意味では救われる人も多いかもしれません。

 

障害児を育児していると、その子にとっては頑張ってもできないことがあると実感することが多くあります。

そこで、頑張ればなんとかなると厳しく対応するのか、子どもに合わせてこちらが折れるのか、デリケートな問題につき線を引くことはできませんが、この本は冒頭の佐藤優さんの言葉通り、とても参考になる本だと思います。

私にとってこの本は、全体的に知的好奇心がかなり満たされましたので、お得感のある一冊だと思いました。

 

一番印象に残った箇所

今この本を思い返してみると、私の頭に一番残っているのは今まで考えてもみなかったとても意外なことでした。

それは、反社会的な人と一般の人との間で、ある生理的特徴の違いがあったこと。

まだ仮説の段階らしいですが、因果関係がかなり明らかになっているそうです。

その生理的特徴とは安静時の心拍数

心拍数が低いことは、恐怖心の欠如や他人との共感力のなさ、刺激を求める行為にもつながるそうです。

このあたり、詳しくは本を読んでくださいね。



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まとめ

カエルの子はカエル。

とはよく聞くことわざですが、この本を読んでその言葉の意味についてあらためて感じることが多かったです。

また人の性格やそれが形作る人生は、いったいどの要因に深く関わっているのでしょうか。

教育論にも大きく関係しているせいか、意見がいろいろありすぎてわけがわからなくなってる感がありますよね。

大きなところでは遺伝と環境があると思いますが、それでは家庭環境はどの程度、子どもの成長にかかわっているのでしょうか。

私はこの本を読んで少しほっとした方ですが、この本の考え方に肯定する人や否定する人、さまざまだと思います。

遺伝の否定的な影響についてはタブー視されている風潮が強いですが、なぜそうなのか、理由を知ることはとても大切なことだと思いました。

 

◆関連書籍

橘玲著『 「読まなくてもいい本」の読書案内:知の最前線を5日間で探検する』

橘玲著 『 残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法 (幻冬舎文庫)』

安藤寿康著『遺伝子の不都合な真実―すべての能力は遺伝である』

 

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