「わたしを離さないで」は実話?映画のあらすじと感想(ネタバレなし)~ノーベル賞作家カズオ・イシグロ原作

わたしを離さないで


 

観終えた後、その逃げ場のない世界観に圧倒されてしまいました。

もしカズオ・イシグロ氏がノーベル賞を受賞していなかったら、私はこの映画を絶対に観ることはなかったと思います。

それは最近なにかとストレスを感じることが多いため、たまに見る映画くらい心温まるものを見たいと思うからです。

ただ、この映画はその枠を超えて観て良かった映画の一つになりました。

 

今丁度「わたしを離さないで」の本を途中まで読んでいます。

先日娘のカウンセリングが終わって実家に帰る際に、娘がツタヤに寄りたいと言い出したので私も数カ月ぶりに入り、今読んでいる本の映画版「わたしを離さないで」を借りました。

余談ですが、ツタヤは108円(/1袋)余分に支払えばポスト返却できるので、最近娘が時々利用しています。

映像だったらネット配信などあるのですが、ことCDやコミックになると予算がなければやはり借りるしかありません。

田舎にはツタヤのような大きい店はないので、このポスト投函のシステムはかなり助かります。

 

話が脱線しましたが、日本では綾瀬はるか主演で2016年に世界初のテレビドラマ化もされていて、店にはDVDもありましたが、よりオリジナルに近い2010年発表の外国映画の方を借りました。

先日小説「日の名残り」の読書感想をこちらにアップしましたが、映画「日の名残り」はレンタル中につき残念ながら借りることが出来ませんでした。こちらは近々アマゾンのネット配信で観る予定です。

 

それにしても、「日の名残り」の印象そのままで「わたしを離さないで」を観ると、まるで同じ人が書いたものとは思えないほど、その世界観に戸惑ってしまうことになると思います。

ツタヤでは2作品ともラブストーリーのカテゴリに入ってましたが、その内容は両者で全く違います。

これが実話だったら国際問題になるのですが、ひょっとして、と思えてしまうところがさすがです。

怖いもの見たさでついつい最後まで、娘と見入ってしまいました。

 

前置きが長くなりましたが、「わたしを離さないで」はいったいどのような映画なのでしょうか。

以下、簡単なあらすじや内容、そして映画の感想などを書いてみたいと思います。

 

映画「わたしを離さないで」あらすじと内容紹介

原作は、先日ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏。

1989年に「日の名残り」で、世界的に権威のある文学賞であるブッカー賞(その年に出版された最も優れた長編小説に与えられる英国最高の文学賞)を受賞したことは、今でこそ日本では広く知られるところになりました。

実は長編小説「わたしを離さないで」は2005年に発表されたのですが、その年のブッカー賞最終候補作品になっていたことをご存知でしょうか。

そのような素晴らしい原作を元に制作された、2010年公開の映画「わたしを離さないで」。

この映画のネタバレには賛否両論があるようですが、すでにあらすじから大体想像できると思います。

ですがこちらではネタバレはあえてせず、映画予告程度のあらすじを以下にご紹介したいと思います。

 

「わたしを離さないで」あらすじ

わたしを離さないで舞台は1990年代末のイギリス。

田園地帯にひっそり佇む寄宿学校ヘールシャムは、特別な存在の子を育てる施設だった。

キャシー、ルース、トミーは、そこで小さい頃から一緒に過ごしてきた。 なぜ自分たちがこの学校にいるのかも知らずに 。

この学校では身体の内と外の健康を保つことが最も重要なこととされている。それは、彼らがある<目的>のために生まれたから。

この学校の生徒たちは、本人が望まなくてもその運命がすでに決まっている。大人でいられるのは短時間 。そしてその生命は見知らぬ誰かのために提供される。

やがて彼らは大きくなり、逃れようのない過酷な運命に近づいていく。ルースの”提供”が始まる頃に3人は思わぬ再会を果たすのだが…

 

彼らが作らされる芸術作品の真の目的と画廊の存在にも注目です。

以下は、映画の予告編になります。

意外だったところ

一番意外だったのは、画廊の目的

生徒たちが創造させられるたくさんの作品のなかから、出来のいいものだけを選別するために時々来校するマダム

生徒たちが信じるところでは、選ばれた作品はマダムが画廊に持っていくとされています。

大切な作品を持ち帰る見返りとして、学校側は定期的に運ばれてくる様々な品物と交換できるコインを生徒に手渡します。

生徒たちはコインもらいたさにせっせと芸術活動にいそしむのですが、私は浅はかにもマダムがその絵を売ってお金にしていると思ってしまいました。

でも真実はとても残酷でした。



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印象に残ったシーン

最後の方で、抗えない運命にさからうように叫び声をあげるトミーの姿が全てを代弁しているように感じました。

映画の予告編にも少しだけそのシーンが出てきますが、トミーには小さな頃、皆からいじめられて癇癪を起こしていた過去があり、それがある先生のアドバイスでずっとおさまっていた経緯がありました。

その先生は正直者故に、ヘールシャムには長くいることは出来ませんでしたが。。

おさまっていたその癇癪(恐らく人生最後)を爆発させるシーンに、トミーの今までの短い人生がフラッシュバックさせられて、思わず涙がこぼれてしまいました。

 

最後に

命の大切さを扱う映画は様々あると思いますが、映画予告編でも、

映画史上かつて描かれたことのない<秘密>

とあるように、ちょっと他の作品とは次元が違う衝撃的な映画だったように思います。

これから小説の続きを読むのですが、映画では描かれていない部分を楽しみたいと思います。

 

ちなみにTBSはイシグロ氏のノーベル賞受賞に伴い、急遽10月18日からの深夜帯で、昨年放送のドラマ「わたしを離さないで」をほぼ毎日再放送しているようです。

主な出演者は綾瀬はるか三浦春馬、そして水川あさみ

主人公のキャシーの役柄はとても難しいため、綾瀬はるかさんはドラマに先駆けて渡英。原作者のイシグロ氏と4時間以上にわたりアドバイスを受けたというニュースを思い出します。

その時はあまり興味がなかったのですが、今となってはとても興味深いニュースだと思いました。

どうでもいいことですが、私はこの映画を娘と2人で観ていたのですが、エッチシーンが2~3度入りましたので結構居心地悪かったです。ご注意くださいませ(汗)

 

追記

ちなみに舞台版の「わたしを離さないで」も存在します。

これはホリプロの企画制作により2014年に舞台化され、彩の国さいたま芸術劇場、愛知県芸術劇場とシアター・ドラマシティで上演されました。演出は蜷川幸雄、脚本は倉持裕。出演者は多部未華子三浦涼介木村文乃

主観ですが、顔だけで見るとこちらのキャスティングの方が外国映画とドンピシャなのですが・・・。

映画を見ているせいか予告編を見るだけで涙腺緩みます。やっぱりイシグロ作品は凄い。