今回読んでみたのは、印南敦史著「プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術」(KADOKAWA/中経出版)
著者の印南氏は、あの ライフハッカー[日本版]で2012年8月から書評コーナーを担当されています。
驚きましたが、一年に250もの書評を書き、そのために一日1冊以上の本を読まれているとのこと。
とても充実した書評を書かれているので、その裏にはどんなテクニックが使われているのかが気になります。
著者はコピーライターなどのライティング業を生業とされている方ですが、もともと本を読むのが遅いらしく、速読術なるものも使っていないとのことでした。
ただ、本はむちゃくちゃ好きらしいです。
この本のポイントはタイトル通り、「伝わる文章」をいかに書くか、につきると思います。
こちらではその部分を取り上げている「STEP3:大切なのは伝えること」を中心に内容をピックアップしてみます。
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「表現する」のではなく、「伝える」
著者は「ライフハッカー」の書評ではなるべく自己主張をしないように心がけているそうです。
個人ブログなら、読者が期待するのは個人の「表現」になりますが、例えばニュースサイトなら、読者が期待するのはニュースそのものになり、その場合は正確に「伝える」ことが重要になります。
読者が求めているのは「ちょっと得した気分になれるような情報」であり、極論をいえば、その欲求さえ満たされれば誰が書いてようが関係ないわけです。(75ページより)
自己主張の激しい文章はネット上でもよく目にするところなので、私も十分注意してブログを書こうと思いました。
伝えるための文章表現で大切な3つのこと
著者いわく、伝えるための文章表現については「ライフハッカー」もビジネス現場のプレゼンも共通する部分があるといいます。
それはまず、先の「自分イズム」をアピールしないということが前提ですが、大切なのは以下3点。
・冷静さ
・客観性
・わかりやすさ
特に最後のわかりやすさは、どんな文章にも必要ですが、見落としてしまいがちなことでもあります。
でも 本当にいい文章とは、平易なことばを使った、読みやすく、理解しやすいもの にほかなりません。そして書き手の立場からいわせてもらえば、難解な文章を書くのは意外に簡単なのです。そして逆に、シンプルでわかりやすい文章ほど、書くのが難しくもあるのです。(84ページより)
大切なのは「つかみ」
STEP2では「刺さる」なにかを用意する、とありましたが、そこで大事なのは「タイトル」でした。
読者を逃がさないタイトルをつけることは重要であり、ポイントは「読んでみたい」と思わせることです。
こちらでは文章の書き方を比べてその差をはっきりさせていました。
「なんなのだろう?」「見たい、知りたい」と思わせるような「つかみ」「フック」を盛り込むと、文章は引き締まり、そして読み手を効果的に刺激することになります。(89ページより)
注意点としては、つかみを意識するあまり、ミエミエ感を読者が感じてしまうなら失敗。
”狙った感”が出てないか、十分見直すことも大切だそうです。
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書評における「引用」の考え方
書評のタイプは、新聞や雑誌などの紙のものと、ウェブ上のもので形が分かれるそうです。
紙の書評は、誰が評しているかが意味を持つため、評者がどう感じたかがポイントになります。
でもそれは例えば「ライフハッカー」の書評の読者とはタイプが違うとのこと。
著者の書評には以下の2つの特徴があります。
①個人的な意見や感想が少ない(ほとんどない)
②紹介する書籍からの「引用」が多い
(94ページより)
特に「ライフハッカー」読者向けの書評には、②が重要だそうです。
「引用」を使い、内容の一部を端的に伝えることで、時間の不足しているビジネスマンでも内容を把握してもらいやすいとのこと。
なにしろそれはその書籍に実際に書かれていることなので、読者にとっては「その本が自分にとって必要か否か」を判断するための有効な材料となり得るのです。(95ページより)
著者は「書評では自分を表現する必要はない」との立場ですが、その反面「どこを引用するか」によって、そのセンス自体が書き手のパーソナリティを表現するとも語っています。
ただ引用が多すぎると文章の「すわり」が悪くなってしまうので、著者の考えでは引用は全体の3割程度にとどめるべきとのことでした。
佐藤優氏も印南敦史氏の考えに賛同
余談になりますが、関連しているのでぜひ。
週刊ダイヤモンド2016年6月4日号(今時点の最新号)の佐藤優氏の書評コーナーで、偶然、印南敦史著『遅読家のための読書術』が紹介されてました。
印南敦史著「遅読家のための読書術」は、ビジネスパーソンを想定した読書の指南書だ。
「遅読」とは、逆説的な表現で、基本となる本をゆっくり精読することで、多読が可能となり、読書の技法をストックからフローに転換することが出来る。
印南氏は、紙媒体(新聞、雑誌など)とウェブ媒体の書評は本質的に異なると考え、(中略:「遅読家のための読書術」の引用文)と指摘する。
その通りだと思う。ウェブ媒体の書評に引用が多いのは、読者のニーズに応えているからだ。
以前、佐藤優著『読書の技法』を読んだことがあるのですが、その本で印象に残ったのは、精読する本とそうでない本を読み分ける必要があるくだり。理由は人生は長くないからとも。
今回紹介した本も、精読するものとしないものの区分けをどうするか、STEP1で著者の考えが述べられていたのですが、その点でも佐藤優氏と共通点があると思いました。
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まとめ
読書して、その内容をまとめるという作業は、あたらめて難しいものだと感じました。
一日に読める本は限られますので、時間との戦いだとも思います。
それについてはSTEP1の「プロ書評価が教える読書術・時間術」の章が参考になります。
今回の本で学んだことを、こちらでも今後活かしていければと思います。
◆「伝わる文章を書く技術」目次
・はじめに
・STEP1:プロ書評価が教える読書術・時間術
・STEP2:読み手の視点に立つ
・STEP3:大切なのは「伝える」こと
・STEP4:「読ませる」文章の書き方
・SPECIAL対談:「ライティングで大切なことって何ですか?」
※ライフハッカー[日本版]編集長・米田智彦☓印南敦史
・おわりに
関連書籍
遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣
※印南敦史氏の最新刊になります。佐藤優氏が書評で紹介してました。
週刊ダイヤモンド 2016年 6/4 号 [雑誌] (ファイナンス力の鍛え方)
※佐藤優氏が書評で、印南敦史著「遅読家のための読書術」を紹介しています。
小内 一 (編集) 「てにをは辞典」
※著者が本の中ですすめていた本。ぜひ手にとって見てくださいとのこと。
岡崎洋三(編さん)「日本語とテンの打ち方」
※著者が20代に購入し、まだ本棚にあるという本。