◆【認知症】ユマニチュードとは?がわかる本『ユマニチュード入門』読書感想
ユマニチュードをご存知でしょうか。
フランス生まれのユマニチュードは認知症患者に有効な介護手法になります。
比較的新しい言葉にもかかわらず、ここ最近だんだんと目にする機会が増えてきたように思います。
こちらではユマニチュードとは何なのか、という疑問に答えてくれる本、『ユマニチュード入門』の概要や読書感想、使えるところなどを書いていければと思います。
ユマニチュードとは
ユマニチュード(仏: Humanitude)とは、包括的ケアメソッドのひとつ。ひろく用いられているが、特に高齢者と認知症患者において有用とされている。ユマニチュードは、フランスのイブ・ジネストとロゼット・マレスコッティにより開発された。34年以上の歴史を持つ。
※引用:フリー百科事典ウィキペディア
上記がユマニチュードの簡単な説明ですが、この認知症患者に対する介護技術が、最近日本でも急速に注目されはじめています。
認知症と言えば、最近のニュースでも認知症のお年寄りが徘徊し、電車と接触した事故があったのは記憶に新しいところです。
それ以外にも、認知症患者をめぐる介護施設のトラブルなどがニュースで取り上げられたこともありました。
このように認知症関連の話題が後を絶たない昨今、認知症ケアのあり方が急激に社会的な注目を浴びてきていることにも、ユマニチュードに注目が集まる要因になっていると思います。
NHKでも早くからこのユマニチュードを番組で取り上げてます。
例えば2014年2月5日放送されたクローズアップ現代はかなりの評判だったようです。
そのほか、「あさイチ」でも今年の4月特集してましたし、2014年に取り上げられたときはかなりの反響を呼んだそうです。
私は『ユマニチュード入門』を読んで、ユマニチュードはとてもシンプルだという印象を受けました。
決して専門の人しか使えないテクニックではなく、認知症患者がいる家族の方にも十分に使えるメソッドです。
前置きが長くなりましたが、この『ユマニチュード入門』について以下に思うところなどを書いてみたいと思います。
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『ユマニチュード入門』について
本の概略
魔法? 奇跡? いえ「技術」です。「この本には常識しか書かれていません。しかし、常識を徹底させると革命になります」
——認知症ケアの新しい技法として注目を集める「ユマニチュード」。攻撃的になったり、徘徊するお年寄りを“こちらの世界”に戻す様子を指して「魔法のような」とも称されます。しかし、これは伝達可能な《技術》です。
「見る」「話す」「触れる」「立つ」という看護の基本中の基本をただ徹底させるだけですが、そこには精神論でもマニュアルでもないコツがあるのです。開発者と日本の臨床家たちが協力してつくり上げた決定版入門書!
この本は入門書とあって、介護に無知な私でも読みやすく、ユマニチュードをよく理解することが出来ました。
理由の一つは、この本がユマニチュードの開発者2人と著者の本田美和子氏の共同制作で生まれた本なので、翻訳本ではなく、そのためダイレクトに心に響いてくるからなのかもしれません。
内容や構成もわかりやすく書かれていて、イラストや文字の配列にも読みやすい工夫がしてあります。
ところどころに実際の介護現場での体験談的コラムも掲載されていますので、息抜きしながら読み進めることも出来ます。
実際の介護現場では、施設のルールを優先するとユマニチュードのケアを実践できないといった悩みもあるようで、最後のQ&Aには数ページをとって、この辺りの問題を解決する提案もされています。
この本を読んだきっかけ
この本を読んだきっかけは、私の親に認知症の初期症状が表れ始めたことによります。
私の親の場合は、MRI撮影した脳には異常は見られませんでしたが、もう80半ばを超えてきたせいもあるのか、傍目から見ても物忘れや気力的に衰えてきたのが最近目に見えてわかるようになりました。
事情で、今は老夫婦2人暮らしを余儀なくされているため、近い将来を考えて今から介護の知識だけでもつけようと思った次第です。
認知症に参考になる本を検索していたら、異常に評価が高い本があり、その本が『ユマニチュード』関連本でした。
そういう理由でまずはユマニチュードの入門書を読んでみようと思ったわけです。
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読書感想
この本を読んだ率直な感想は、とても簡単でわかりやすいということでした。
ただ実際の認知症患者を目の前にすると、それなりの難しさはあると思いますが、プロでない私は認知症の親の介護をするにあたって、ユマニチュードはとても参考になる手法だと思いました。
それくらい理解しやすいし、それは細かなテクニックというよりも、人と人(ケアする側とされる側)との絆を優先する手法なので、できた人は当たり前に使える手法なのかもしれません。
私ごとですが、耳の悪い親に対して例えばこの本に書いてあるように、正面から声をかけるなどの配慮を今まで意識していただろうかと思い返すと、当たり前のことが出来ていない自分に気が付き反省点が多かったです。
声かけ一つでそうですから、その他はどうなのかはいうまでもありません。。
この本は認知症患者はもとより、体の機能が衰えてくる老人全般に対しても使える技術なので、介護の現場に留まらず、例えば老人が訪れるショップの店員などにも、とても参考になるのではないでしょうか。
私が老人になって、どこの施設に入るか選択できるとしたら、間違いなくこのユマニチュードの手法を取り入れている施設に入りたいと思いました。
ここでユマニチュードの手法をまとめたものをウィキペディアから引用してみます。
ユマニチュードではまず評価を行う。
・回復を目指す
・機能を保つ(悪化しないようにする)
・共にいる(そばに居て、穏やかに死を迎える)といういずれの 段階にあるのか、評価する。
ケアの実施にあたっては
・見つめること
・話しかけること
・触れること
・立つことを基本として、これらを組み合わせて複合的に行う。
「見つめながら会話位置へ移動する」
「アイコンタクトが成立したら2秒以内に話しかける」
「言葉をかけながら、相手に静かに触れる」など、そのケアの内容は具体的である。150を超える具体的な技術があり、「人とは何か」という哲学に基づいて体系化されている。
※引用:フリー百科事典ウィキペディア
印象に残ったところや使える手法
この本の冒頭に著者の「はじめに」があるのですが、まずその内容に引き付けられました。
著者は、総合病院の内科の臨床医なのですが、最近あまり経験することがなかった出来事に遭遇することが増えてきたそうです。
例えば患者が高齢の場合、仮に10日入院して疾患を治したとしても、その後その患者は歩けなくなったり、自分で食事をとれなくなったりとか。
このような方々は、入院の直接になった疾患は治っても、自宅での生活に戻ることはできないそうです。
その現状に著者は思い悩みます。
そもそも、わたしたちが学んできた医学は、治療の意味が理解でき、検査や治療に協力してもらえる人を対象とすることを前提にしています。
高齢で認知機能が低下してきた方々にどのように接していけばよいのか、わたしは途方に暮れていました。
※引用:本田美和子著『ユマニチュード入門』P4
そんな時、著者はこの問題に有効なケアがフランスに存在することを知り、2011年にフランスに渡り実際にユマニチュードを経験されたとのこと。
そしてこの技法が日本でも十分利用できることを確信されたそうです。
聞き慣れない、そして特に横文字の場合は非常にとっつきにくいものだと思います。
でも、ユマニチュードに関してはまずはこの本から読んでみればとても理解しやすいです。
特に親が高齢者の場合は、大半の方がもっとこの手法を深く学びたいと思うのではないでしょうか。
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まとめ
今回この本を通じて、近いうちに訪れるであろう親の介護に、気持ちだけでも向き合うことができました。
まずは親が認知症の初期症状にある今、この本から自分にできることをピックアップしていこうと思います。
今のところは聞こえが悪い親への話しかけや目を見て話すことからになりますが、同時発売されたDVDにも目を通して、今後もユマニチュードを学んでいきたいです。
その他、私ごとですが下の子に重度の障害があり、下の子に対してもこの技術が応用できないかにとても興味があります。
子どもの症状は、自閉傾向がある、言葉が出てこない、立ったり歩いたりすることがどちらかというと困難、一人で食事やトイレが出来ないなどなど、結構日々悩んでいることが多いです。
高齢者の場合とケースは違いますが、ユマニチュードが提案している「人と人の絆」という点では共通だと思うので、今後、子どものことも頭において実践できればと思います。
関連書籍
・ユマニチュード 優しさを伝えるケア技術 DVD
※『ユマニチュード入門』と同時発売されたDVDです。現在入手困難につき値が定価よりも上がっています。私の近くの図書館にはありましたので図書館に期待したいですね。
・Humanitude(ユマニチュード)「老いと介護の画期的な書」
※『ユマニチュード入門』の次に読める本だと思います。著者メンバーも同じ。私も次はこの本を読みたいと思います。
・「ユマニチュード」という革命: なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか
※著者は『ユマニチュード入門』と同じメンバーです。ただ2016年8月3日発売予定なのでこちらはもう少しの辛抱ですね。