【本】東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇蹟」あらすじ&感想(ネタバレなし)

東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇蹟」


 

9月23日から封切りされている映画「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 。

原作は東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇蹟」になりますが、先日本屋で目に止まったのがきっかけで、数カ月ぶりに小説を読むことができました。

余談ですが今本好きの母がこの本を中ほどまで読んでいます。

父の死から4ヶ月経ったこともあり、母も私も気持ちに少し余裕が出来たからかもしれません。

それはさておき、こちらではこの小説を読んだ感想などをまとめてみたいと思います。



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「ナミヤ雑貨店の奇蹟」はどんな本?

 

 

映画化からこの本を知った方も多いのではないでしょうか。

私もその口なのですが、とくに最近つらいことが色々と続いたので、単に「感動ミステリー」というフレーズに釣られてしまっただけなのかもしれません。

東野圭吾作品は鉄板ということもあり、期待通り読んでよかった本の一つになったのですが、まずはこの本のあらすじなどを下記にまとめてみたいと思います。

以下、アマゾン「ナミヤ雑貨店の奇蹟」のページからの引用です。

東野作品史上、もっとも泣ける感動ミステリー、待望の文庫化!

悩み相談、未来を知ってる私にお任せください。

少年3人が忍び込んだ廃屋。
そこは過去と未来が手紙でつながる不思議な雑貨店だった。

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。

時空を超えて過去から投函されたのか? 3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが……。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。

悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?

文庫で400ページほどありますが、2日で述べ約5~6時間で読めたように思います。

「時空を超えて」という言葉通り、読者はほどなくして非現実な世界に引き込まれてしまいます。

小説の醍醐味は、現実でない世界にはまれることだと常々思っていますので、その点ではどっぷりとはまれる本でした。

物語には様々な伏線があり、中盤辺りから意表をつく形で伏線が回収されていきますので、特にその辺りから最後までは夢中で読み進むことになりました。

 

この小説の舞台はいつ?

時空を超えるこの小説でピックアップされる時代は、現代と1979年

1979年といえば1980年にピークを迎える第2次オイルショックの年。

その1980年はモスクワオリンピックが開催された年なのですが、前年1979年12月に起きたソ連のアフガニスタン侵攻の影響で、西側諸国の集団ボイコットという事態がありました。

 

オリンピック参加不参加国
■黄色:1976年 モントリオールオリンピックをボイコットした国
■青色:1980年 モスクワオリンピックをボイコットした国
■橙色:1984年 ロサンゼルスオリンピックをボイコットした国
■灰色:上記3大会とも出場した国
出典:Wikipedia

 

このような事情で日本もオリンピックをボイコットしたのですが、世界的にもこの大会は「スポーツと政治」の関係が大きく問われた大会でもありました。

登場人物の中にはこのボイコット問題で人生が大きく変わったスポーツ選手、その後1986年頃から約5年間続いたバブル時代を経て人生を大きく変えた人物も登場しますが、皆「ナミヤ雑貨店」と、とある施設に深く関係しています。

またビートルズに詳しい方にはとても味わい深い小説になるかもしれません。

 

映画の見どころを予想すると

これを書いている時点ではまだ映画を見ていませんが、まず注目するところはこの小説に登場する「再生」という曲。

この小説にはその歌詞は出てこなかったように思いますし、もちろん音楽は聴けるはずもありません。

ただ小説ではこの「再生」という曲の出所がとても重要なポイントになります。

そこのところを映画ではどのように表現されるか興味深いのですが、その楽曲を山下達郎が提供していることから、その部分にかなりの力を入れていることが想像できます。

そしてこの「再生」を映画で歌うのは、伝説の歌姫(水原セリ)役の門脇麦

すでにYoutubeではPVが公開されていますので、下記に山下達郎と門脇麦の両バージョンを貼り付けておきますね。

 

 

REBORN」は文字通り「生まれ変わる」という意味。

原作のこの曲を映画ではどのように表現しているのか非常に気になるところです。

その他、原作から映画がどのように変わっているのかも楽しみなところです。



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感想&まとめ

いったい良いアドバイスってなんなんだろうと、あらためて考えさせる一冊でした。

登場人物は人生経験の浅い若者が出した答えを、ナミヤ雑貨店の店主が書いたものと思い、それゆえとんちんかんな回答でも必死にその真意を探ろうとして、結果、自分なりの結論を導き出していきます。

小説の中にもありましたが、悩み事相談に来る人はすでに自分の考えは決まっており、誰かに後押しして欲しいから相談にくるのだそうです。

とすると悩み事相談での名回答とは、回答者が相談者の考える枠を広げられる材料を提供できるかどうかにかかっており、相談者はその材料から自ら人生が良くなる方法を自らの力で考えられれば理想なのかもしれません。

もちろん回答者は相談者に対して親身になることは大前提ですが、それが満たされればこの小説のように、時代も生きる環境も年齢も全く相容れることのない人間同士の方が、相談者にとっては一番良い相談相手になるのかなと思いました。

 

と、小難しいことを考えてしまいましたが、この本はちょっと生き方に疲れたな~と思うときに読むと、少しだけ上を向きたくなる気持ちが湧いてくる本かもしれません。

余談ですが小説の好きなところは、現実からちょっとだけ離れることができ、そしてまた戻りたいときに戻ってこれるところだと思います。

私はこの本を読んでいて、高校生の時にはまってしまった眉村卓のSF小説の感覚を思い出したのですが、私がプチ現実逃避を小説から学んだのはこの頃でした。

最後になりますが、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」のラストシーン、余韻が残る終わり方でとても良かったです。