古事記の漫画本でおすすめはこれ!『まんが古事記』 感想

ふわこういちろう・戸矢学『まんが古事記』


 

現代日本で「古事記」を語ることは、なかなか難しいことだと思います。

日本の神話でもある「古事記」は、戦前まで学校で普通に教育されていたそうです。

それが戦後、「皇国史観」の汚名をきせられ教育から抹消されてから、「古事記」は本来の意味を失っているように思えます。

イギリスの歴史学者トインビーは、

12~13歳までに民族の神話を学ばなかった民族は、例外なく滅びている」ともいってます。

これが本当だとすると、日本は今、未曾有の危機に直面しているのではないでしょうか。

 

このような古事記ですが、今回古事記の全体像を短時間で理解することができる、かなり素敵な本を読みました。

『愛と涙と勇気の神様ものがたり~まんが古事記』(ふわこういちろう著・戸矢学監修、講談社)なのですが、これはおすすめです。

本書はどのような本なのか、こちらで少し紹介してみたいと思います。



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本書の内容と構成

 

神社にお参りする時は、『まんが古事記』を読んでから行こう。神様のことがよくわかるよ!

【大人も子供も楽しめる! 可愛い神様キャラが大活躍する一大絵巻】

天 岩戸開き、ヤマタノオロチ、因幡の白兎、海幸彦と山幸彦といった、子供のころに読んだ日本の神話はどれも古事記に掲載されているもの。

古事記というと難し そうなイメージがありますが、実は個性的なキャラクターの神様が様々な愛憎劇や冒険活劇を繰り広げる、愛と涙と勇気の一大ストーリー。

そんな古事記を大人も子供も楽しめる作品に仕上げたのがこれ。活字の古事記につまずいた人でもすんなり古事記の世界に入れます。

イザナギ・イザナミの国生み、神生み~天岩戸とヤマタノオロチ~オオクニヌシの国作り~国譲り~天孫降臨~と、古事記の上巻(神代の巻)をあますところなく描き、巻末には中巻&下巻(人代の巻)のダイジェストも掲載。古事記の全体像もわかります。

また、コラムとして古事記の成り立ちや日本書紀との違いなど基礎知識や雑学ネタも紹介。楽しみながら古事記が身に付く、初めての人でもすんなり入りこむことができる全く新しいタイプの古事記です。

【目次】
古事記の名場面
とってもわかりやすい神様系図
古事記ができるまで
●其の一 イザナギ・イザナミの国生み、神生み
●其の二 天岩戸とヤマタノオロチ
●其の三 オオクニヌシの国作り
●其の四 国譲り
●其の五 天孫降臨
●番外編 中巻・下巻ダイジェスト
DJサルタのモヤモヤズバッと解決! 道開きQ&Aコーナー1~5
古事記と神宮

※引用: Amazon『まんが古事記』

ふわこういちろう・戸矢学『まんが古事記』ふわこういちろう・戸矢学『まんが古事記』

絵的に圧巻なのが冒頭の「古事記の名場面」。

各章テーマのイラストがカラーで大きく描かれています。

ふわ氏の絵は、かわいくそれでいて迫力があるので、今までの漫画にない親しみやすさが湧いてきます。

 

ところで古事記は上・中・下巻があり、本書は上巻(神代記~初代神武天皇の誕生まで)をメインに書かれています。

ちなみに中・下巻(人代記~神武天皇の大和入りから33代推古天皇まで)は、6ページほどのダイジェストでフォローされています。

各章ごとのQ&Aコラムや、古事記についての予備知識もとても参考になりました。



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古事記の豆知識

本書で知った古事記の豆知識を、いくつかまとめてみたいと思います。

古事記の誕生について

古事記の誕生は飛鳥時代にさかのぼります。

40代天武天皇が日本各地にバラバラになっていた神話や伝説をひとつにまとめて後世に残そうとしたのがはじまり。

稗田阿礼(ひえだのあれ)と太安万侶(おおのやすまろ)が30年かけて完成させました。

上中下巻の3冊セットになり、「古い事を記しました」の意で「古事記」と名付けられたそうです。

時は和銅5年(西暦712年)のことでした。

 

その後、江戸中期まで時を進めますが、その頃には古事記の原本が存在せず、あるのは各地の写本のみ。

国学者の本居宣長(もとおりのりなが)は35年かけて今の古事記の元になる「古事記伝」を作ったそうです。

『古事記』の研究は、近世以降、特に盛んとなった。江戸時代の本居宣長による全44巻の註釈書『古事記傳』は『古事記』研究の古典であり、厳密かつ実証的な校訂は後世に大きな影響を与えている。
※引用:ウィキペディア「古事記」より

 

古事記と日本書紀の違い

どちらも40代天武天皇が作ることを決めたのですが、古事記は日本向け、日本書紀は外国向け(唐)なのだそうです。

日本書紀のほうが古事記よりも完成が8年遅く、日本書紀はいわば日本のガイドブックとのことでした。

 

古事記に登場する神様の数

古事記にはたくさんの神様が登場しますが、その数なんと321柱

ちなみに神様は「人」ではなく、「柱」で数えます。

日本にある神社のほとんどに、古事記由来の神様が祀られているそうです。

また古事記では色んな神様が、死んだり殺されたりするのですが、そこからまたすぐに新たな神様が生まれます。

男女の神様が、ひとめぼれしてすぐに結ばれてしまうのも、古事記の典型的なパターンです。

 

古事記と神宮について

全国の神社は約8万社あると言われています。

その中でも格式が高い神社を「神宮」といいます。

日本には24ヶ所の神宮がありますが、そのトップはもちろん伊勢神宮

でも伊勢神宮の正式名称が「神宮」だということを知っているのは少数派かも。

※出雲大社などの大社は神宮とは別になり、「大きな神社」という意味だそうです。こちらも全国24ヶ所程度存在します。



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感想&まとめ

インターネットでブログや動画を見ていると、親日をテーマにしたコンテンツが多くなっているような気がします。

日本のことをもっと知りたくて古事記や日本書紀を買っても、私のように読む機会がもてないまま、いつの間にか本棚で眠らせている人も多いのではないでしょうか。

本書はまだ古事記を読んでいない人にとっては、かなりコストパフォーマンスのよい本だと思います。

とてもわかりやすくまとめられていますし、何より絵が素敵すぎます。

読後、古事記との距離がぐっと縮まったような気がしました。

 

私ごとですが、身内に出雲大社に関わる仕事をしている者がいたおかげで、出雲神話には幼い頃から親しみを覚えることができました(因幡の白兎とか)。

神社で読まれる祝詞(のりと)にもさまざまな神が登場するので、今回神様の名前を読みながら、日本人であることのありがたさを感じている次第です。

日本の素晴らしい伝統は、現在ではすでに形骸化しているものが多いのですが、その本質を理解して後世に伝えていくことはとても大切な作業だと思います。

古事記はその基本になる書物なので、もっと深く知る必要があると感じました。

 

※先日発売された竹田恒泰氏の『現代語古事記 ポケット版』を調べてみたら、竹田氏の面白い動画が見つかりましたので、下にご紹介いたします。

竹田恒泰チャンネル
聖書の神は人を作ったが、古事記の神は人を作らないのはなぜか?