◆パナマ文書とは何か?日本の闇と今後の世界情勢が簡単にわかる本
渡邊哲也著『パナマ文書』を読みました。
経済に詳しくない私でも内容は一通り理解できましたので、一般向けにわかりやすくまとめられた本だと思います。
この本はパナマ文書そのものの解説にとどまりません。
その背景に何があるのか、世界や日本に与える影響、また日本はこのパナマ文書をどう扱えばいいかなどについて、著者が興味深い考察をされています。
200ページ程度の新書版の本ですが、夢中で読み切ってしまいました。
こちらでは、パナマ文書の簡単な説明、そしてこの本の概要や感想、印象に残ったところなどをまとめていきたいと思います。
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パナマ文書とは
パナマ文書(パナマぶんしょ、英語:Panama Papers)とは、パナマの法律事務所、モサック・フォンセカ(Mossack Fonseca)によって作成された、租税回避行為に関する一連の機密文書である。
文書は1970年代から作成されたもので、総数は1150万件に上る。文書にはオフショア金融センターを利用する21万4000社の企業の、株主や取締役などの情報を含む詳細な情報が書かれている。
これらの企業の関係者には、多くの著名な政治家や富裕層の人々がおり、公的組織も存在する。
合計2.6テラバイト (TB) に及ぶ文書は、匿名で2015年にドイツの新聞社『南ドイツ新聞』に漏らされ、その後、ワシントンD.C.にある国際調査報道ジャーナリスト連合 (ICIJ) にも送られた。
※引用:フリー百科事典ウィキペディア
上記の補足ですが、オフショアとは外国人や外国企業向けの非居住者向けサービスのことで、このようなサービスを行っている国や地域をオフショア金融センターと呼びます。
その地域では、支払う税を軽減あるいは免税にして、海外からの資金を呼び込んでいます。
特にこのモサック・フォンセカはオフショア取引では世界第4位の法律事務所で、その取引地域や銀行は多岐にわたります。
2.6テラバイトという情報量は、いままでリークされた最大の情報量の10倍とも言われており、そう考えると質・量ともにとんでもないリーク量になりますね。
オフショア金融センターを利用する目的は、税金対策やマネーロンダリングによるものが多いと聞いています。
約40年間の取引情報が漏れた影響は予想できないだけに非常に気になるところです。
オフショア=タックスヘイヴン(租税回避地)と理解されている風潮がありますが、必ずしもそうではなく、保険会社などがリスク回避のためにオフショアを利用していることもあるそうです。
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渡邊哲也著『パナマ文書』について
この本を読むきっかけ
「パナマ文書」というタイトルに惹かれたのと、ベストセラーになっていたのでつい衝動買いしてしまいました。
また私自身10年ほど前にペーパーカンパニーを海外で作ったことがあり、そのこともあって今回の件、とても興味を持った次第です。
余談ですが、私の場合はアメリカのデラウェア州で本社を設立登記し、日本でまっとうな(汗)活動をしてました。
目的は1人で株式会社を作りたかっただけで、当時日本では1人株式会社を作ることが出来なかったため、仕方なくペーパーカンパニーをアメリカに作ったというわけです。
そんな理由もあり、その当時興味を持っていたオフショアやタックスヘイヴンに関連する『パナマ文書』がずっと頭から離れませんでした。
本の概要
世界に衝撃を与えているパナマ文書。2.6テラバイト、1150万件に及ぶ膨大なデータ量で、今後、さまざまなスキャンダルが発覚する可能性がある。
すでにアイスランド首相を辞任に追い込み、プーチン、習近平の疑惑も発覚、キャメロン首相に至っては国民の批判が噴出し、英国のEU離脱にも影響を及ぼすと目されている。この機密文書の暴露は、世界情勢を一変させる力を秘めているのだ。
タックスヘイブンに作られた企業や銀行口座は、「真の所有者」が見えづらく、それゆえに違法な租税回避や反社会的勢力の取引にも利用されてきた。その内実が暴かれることで、存続の危機に陥る企業が続出する恐れすらある。
本書は、パナマ文書から見えてくるタックスヘイブン悪用の仕組みから、今後の世界情勢の変化、そして日本の企業や社会に与える影響までを完全解説!
※引用:Amazon渡邊哲也著『パナマ文書』内容紹介 より
第1、2章では、まず「パナマ文書」やオフショア、タックスヘイヴンなどについての基礎的な解説から始まります。
その後、タックスヘイヴンを使った脱税方法の代表的な手法や、日本で導入されたマイナンバー制度との関連性にも言及しています。
第3章ではパナマ文書の公開で、世界情勢はどのように変わるのか、なぜイギリスが割を食っているのか、リーク元はアメリカという噂がなぜ流れているのかなど、国際的な視点でこのパナマ文書をとらえ、この問題の着地点を予想しています。
第4、5章は日本に関しての章ですが、第4章が「パナマ文章が暴く「日本の闇」と企業の関係」、第5章が「日本はパナマ文書をいかに活用すべきか」という見出しでわかる通り、日本人にとってとても興味ある内容になっています。
最後のあとがきでは著者のパナマ文書流出に関してのガツンとした意見が述べられていますが、全く同感でした。
感想
このような経済がらみの本は、私は難しくて途中ついていけないことが多いのですが、この本はとても面白く最後まで一気読みすることが出来ました。
これだけ早い期間、しかもこのボリューム(内容)で出版されたことを本当にありがたく思います。
パナマ文書のことは背景も含めてよく理解できましたし、今回クローズアップされたオフショアの存在意義、そしてそこに集まる反社会的勢力や企業など、過去からの流れの中でわかりやすく解説されています。
特にこの金融問題に関してはアメリカにかなり分があるようで、中国に接近するイギリスとその理由、そしてパナマ文書でのキャメロン首相の失態、その先のイギリスEU脱退説も興味深く読みました。
アメリカに認められない企業はアメリカの金融機関との取引が出来ない法律も可決されているとのこと。
そうなればアメリカが難ありと判断した海外の銀行や企業(例えば知っていながらテロ関連企業と取引したとか)はアメリカとの取引を停止され、ドルが基軸通貨ゆえ企業は存続できないそうです。
全世界の金の流れを個人レベルまで視覚化しようとする試みは、テロリストやその予備軍に流れる資金を断つのにとても有効なのだなとあらためて感じました。
日本にも在日や暴力団などの問題がありますが、金の流れが明確になれば、金は人のいないところには流れないという理由から、関係者の特定が可能になるとのこと。
それには日本のマイナンバー制度の導入が必須になってくるそうです。
例えば就労時にはマイナンバーを提示が義務付けられ、会社が税を支払う際にもマイナンバーが必要になってくることから、不法就労自体が出来ない仕組みになっていくとのこと。
その他、私が知らなかった様々なことも書かれていて、この本を読む意義はとても大きいと思いました。
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印象に残ったところ
一番身近に感じたのは、マイナンバー制度が導入されたいきさつです。
以前、『余命三年時事日記ハンドブック』を読んだのですが、そちらにはマイナンバー制度導入の理由は在日問題(通名など)にもあることが書かれていました。
こちらの本ではそれに加えて不法就労問題やその他多くのメリットがあることを知りました。
また、私は今まで「アメリカ=軍事」というイメージが大きかったのですが、著者の下記の言葉でその考えをあらためました。
人類を全滅させる核などの大量破壊兵器が生まれた今、世界の戦争の仕組みは軍事オプションから金融制裁へと大きく変化しつつある。
アメリカはテロとの戦いや反米国家との戦いに金融規制を用いており、ウクライナ問題におけるロシアとの戦いにおいても、ロシアへの金融(経済)制裁を発動させた。
北朝鮮へも同様であり、金の流れを止めることで相手国を疲弊させる戦略をとっているわけである。いわば、兵法で言う兵糧攻めであり、これは時間とともに大きな効果を発揮し始めている。
※引用:渡邊哲也著『パナマ文書』はじめにP5
やっぱりアメリカは強いですね。
まとめ
パナマ文書はあの電通も絡んでいるとのこと、メディアには期待できなさそうですね。
だからこそ、このような本が流通する必要があるのだと思いました。
自分の知らないところで、日本が戦ってくれていることに感謝です。
パナマ文書については、今後しばらくは新たな情報が出続けると思いますので、今後も注意深く見ていきたいと思います。
関連情報
パナマ文書をダウンロードする方法
・「パナマ文書」のデータベースがついに公開、誰でもカンタンに検索する方法はコレ
※GIGAZINEに「パナマ文書」のダウンロード方法が掲載されてます
書籍
・橘玲著「タックスへイヴン Tax Haven (幻冬舎文庫)」
ドラマ・映画
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※ジュリア・ロバーツ&デンゼルワシントン。名前が似ていたので。。